熱い夏を上手に乗り切ろう!

戸塚共立第2病院
スポーツ総合診療科
納 響(おさむ ひびき)医師
専門分野
スポーツ総合診療科
資格
内科専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会健康スポーツ医
日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医
はじめに
ここ数年で猛暑日(35℃以上)は増加傾向であり、今年も暑い夏が始まろうとしています。
そこで、テレビなどでもよく耳にする「熱中症」についてお伝えします。
熱中症とは、気温や湿度が高い状況下で起こる症状の総称を言い、場合によっては死に至ります。長時間、暑熱環境下にいると、体内に熱がこもり、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こります。
熱中症は10代では運動時に多く、50代以降はそこに労働、そして日常が加わってきます。厚生労働省の調査結果では、2021年に547人であった死傷者数が2025年には1681人とほぼ3倍の数字となっており、明らかな増加傾向をたどっています(図1)。

どうして熱中症になるの?
暑い時には皮膚に多くの血液が分布し、外気への放熱により体温低下を図ります。また汗の蒸発に伴って熱が奪われる(気化熱)ことでも体温が下がります。しかし、大量に汗をかくと、水分や塩分・ミネラル(ナトリウム、カリウムなど)を失い、血流を悪化させ、体内の熱を逃しにくく体温が上昇し、めまいや頭痛、筋肉のこむら返り等を起こします(図2)。これが熱中症です。
熱中症の原因は様々です。環境の問題(気温や湿度が高い、風が弱い、長袖ユニフォームや防具着用など)や、個人の問題(睡眠不足や肥満、体力レベルが低い、乳幼児や高齢者、不十分な暑熱順化【後述】など)があります。そして、熱中症に関する知識が少ないために、防げなかった熱中症も多く存在します。

WBGTとは?
「WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)」は熱中症対策を行う上で重要な指標です。体が感じる暑さを、気温だけでなく、湿度や輻射熱(日差しなど)も加えて指標とします。WBGTの基準値は表の通りで、WBGTが28℃を超えると熱中症発生件数は急激に増加することがわかっており、激しい運動は控えるようにとされています(図3)。環境省熱中症予防情報サイトなどに掲載されるので、ぜひチェックしてみてください。

図3
1.環境条件の評価にはWBGT(暑さ指数とも言われる)の使
用が望ましい。
2.乾球湿度(気温)を用いる場合には、温度が高ければ、1ラン
ク厳しい環境条件の運動指針を適用する。
3.熱中症の発症のリスクは個人差が大きく、運動強度も大きく
関係する。運動指針は平均的な目安であり、スポーツ現場では
個人差や競技特性に配慮する。
③出典:日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」より
上手な熱中症対策は?
体調管理、環境調整
栄養不足や睡眠不足といった生活上の問題が引き金になり得るので、体調管理は重要です。また、暑熱環境で、熱の逃しにくい長袖・長ズボンや、防具の着用なども熱放散の妨げになるので注意しましょう。
暑熱順化
暑さにも慣れがあります。この暑さになれるプロセスを「暑熱順化」と呼びます。暑さに慣れることで効率的に発汗され、さらにミネラルの喪失も減り、体温調節がスムーズになります。暑熱順化は2週間程度かけて、朝夕の散歩を取り入れ、1日30分~1時間程度のウォーキングやジョギングをしましょう。ぬるめのお湯(38~40℃)に浸かったり、冷房を使う際は徐々に温度を下げたりして暑さを感じる時間を作るのも効果的です。※アスリートの場合は活動レベルに応じて負荷をあげます。
クーリング(冷却)
現在は、手掌や顔、足の裏などの皮膚が薄い部分にある毛細血管を冷やすことで効率的に体温が下げられることがわかっています。冷水バケツに手を入れる、アイスパックや冷たいペットボトルを握るだけでも体温低下につながります。
水分補給
汗にはミネラルが含まれているため、水分補給には真水ではなく、塩分・糖分を含む飲料が推奨されます。一般的なスポーツドリンクは糖分が多いため、運動前や軽い運動時のエネルギー補給に最適です。
また、しっかり汗をかく運動中、脱水や熱中症を積極的に予防したい場合は、市販の経口補水液(例:OS-1など)がおすすめです。糖分が少ないため吸収が早く、塩分が多めなので汗で失われたミネラル補給に適しています。
熱中症になってしまったら
熱中症を疑う症状(めまい、頭痛、たちくらみ、筋肉痛、筋肉のこむら返り等)を認めた場合は意識の確認、救急機関への受診、身体冷却、水分摂取などを適宜行う必要があります(図4)。早めに想起し、対応することが大切です。熱中症は決して稀な疾患ではなく、現代の暑熱環境では誰でも起こり得ます。ぜひこの機会に知識を身につけて、熱中症を予防しましょう!

参考文献:日本スポーツ協会 「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」/環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」熱中症の起こり方
笠原政志、 熱中症を科学する スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策、 竹書房
