『食べる』の見直し方 ~嚥下機能の検査とアドバイス~

戸塚共立いずみ野病院 脳神経内科
古谷 正幸(ふるや まさゆき)医師

『食べる』ことまで検査があるのか?

昨日は出張の途中、東京駅の話題のカレー屋さんに行きました。溶かしたバターのような濃厚なルーに、大きめ
だけどトロトロの野菜。小瓶に入ったスパイスオイルを少し足して…今日は「食べる」ことに関するお話です。
医学用語で、「食べる」ことは摂食、「飲み込む」ことは嚥下と言います。
これらは、栄養を取ることだけでなく、生活の楽しみとしても不可欠です。しかし、普段何気なく行っている「飲
み込み」の動作には、実は多くの筋肉や神経が関与していて複雑です。しかも多くの動作が無意識に行われて
います。うまくいかないことがあっても気づかなかったり、何が問題かわからなかったりして、肺炎などのトラブ
ルが起きて初めて判明することもあります。

どうやって調べるのか?

診察や生活に関する聞き取りを基本に計画を立てて、検査を行います。 嚥下内視鏡検査では、細いカメラを鼻から挿入し、喉の内部を観察します。その状態で飲み込んでいただくと、喉に送り込まれた食べ物や飲み込んだ後に残ってしまったものを直接観察することができます。 嚥下造影検査では、造影剤を含んだ食べ物や飲み物を飲んでいただき、X線を用いて飲み込みの過程を観察します。口や喉だけでなく鼻から食道まで同時に視野に収めることができ、色々なことがわかります。検査にはそれぞれ長所と短所があるので、当院では併用することが多いです。

嚥下内視鏡検査で使う細いカメラ

当院の摂食嚥下機能評価入院

当院では、嚥下機能の確認が必要な患者さんを対象に、「摂食嚥下機能評価入院」を実施しています。
このプログラムは、5日間の入院期間中に各種の評価とリハビリテーションを行います。具体的には、月曜日に入院し、その日から口のリハビリを開始。火曜日には嚥下内視鏡検査、水曜日には嚥下造影検査を行い、木曜日には多職種によるカンファレンスを経て、金曜日には食事の準備方法や安全な食べ方の指導を行います。カンファレンスには医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカーが参加し、それぞれの視点からの意見を持ち寄って話し合います。

患者さんへの指導

当院では具体的な食事の指導を行います。例えば、食べ物の固さや粘度についてのアドバイスを行うとき、調理方法をお伝えしたり、買ってくる場合には例えば「ユニバーサルデザインフードの『舌でつぶせる』がよいです」といった具体的な選び方をお伝えしたり、実生活に即した情報を提供します。また、食べ方についても、姿勢の工夫や飲み込みやすい方法を、時に実際に食べていただきながらご指導します。

※ユニバーサルデザインフードは食べやすさに配慮された食品で、選びやすいように『容易にかめる』『舌でつぶせる』などの表示が粘度やかたさの基準をもとにつけられています。

覚えておいてほしいこと

嚥下障害の症状は、注意して聞くとわかる時があります。例えば、水分でむせる、食事に時間がかかる、粉薬が飲みにくくなるなどは、嚥下の症状の可能性があります。また、例えば「カマボコやサツマ揚げを避ける」など食事の傾向が変わった場合も、嚥下機能の低下のサインかもしれません。この記事をお読みになって気になることがあれば、戸塚共立いずみ野病院にお電話ください。

戸塚共立いずみ野病院のご案内
当院は整形外科・脳神経内科・脳神経外科・内科・リハビリテーション科の病院です。整形外科・脳神経内科は救急医療・地域医療を中心とした救急医療を行っております。
回復期リハビリテーションでは、患者様を“円”の中心に据え、多職種が力を合わせて地域社会の復帰に向けてサポートします。
電話番号 045-800-0320