地域の大腸がん死ゼロを目指して

地域の大腸がん死ゼロを
目指して

今回は、TMG本部横浜支部 内視鏡診療推進室
消化器内視鏡技師 池宮城 薫(いけみやぎ かおる)さんにお話しを伺います。

はじめに

1年前の3月、国内8か所で、神奈川県及び横浜市、そして横浜未来ヘルスケアシステムのシンボルカラーでもある「ブルー」で各地を彩るライトアップが行われていたことをご存でしたでしょうか?ライトアップというと、乳がん啓発活動のピンクリボン運動が世界的には有名ですが、実は他のがんにも様々なシンボルリボン(カラー)や啓発月間が存在し、3月は国際的な大腸がん(ダークブルーリボン)の啓発月間になります。大腸がんの啓発カラーである「ブルー」で各地を彩るブルーリボンライトアップ(首都高速レインボーブリッジ、さっぽろテレビ塔、博多ポートタワー、東京都庁、京都市役所など)が昨年行われ、神奈川県総合庁舎も日本がん協会の呼びかけに名乗りを上げて、ブルーリボンライトアップを行いました。

まずは大腸がんについて正しく理解しましょう!

①大腸がんは日本人が患うがんの第1位、がん死亡数では第2位(女性は1位)です。

日本人の2人に1人ががんに罹患するという中で、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝がんなどの消化器悪性腫瘍はその上位を占めています。2021年にがんで死亡した人は381,505人(男性222,467人、女性159,038人)で、死亡数第2位(女性は1位)は大腸がんになります。

出典:国立がん研究センター情報サービス

②早期の大腸がんには自覚症状がありません。だからこそ検診が大切です。

初期症状はわかりづらく、また検査に対する恐怖・不安・羞恥心から、発見が遅れてしまうことが多いのも事実です。行政が推奨するがん検診の中でも、大腸がん検診は便潜血検査(検便)のみの負担の少ない検査ではありますが、乳がん検診よりも低い受診率となっています。
お体はお一つですので、一部位の検査を受けて安心してしまうには、大きなリスクが伴います。
ご家族のことを最優先にして、ご自分のことが後回しになる女性の皆さまこそ、各部位のがん検診をお受けいただきたいのです。早期発見のカギはまずは検診から。
40歳になったら年に1回欠かさず受けるようにしていきましょう!

出典:がん検診受診率 横浜市保健統計データ集

③大腸がんは早期発見・早期治療で治る病気です。

大腸がんの治療法は日進月歩です。早期のステージ1であれば5年相対生存率は98.8%。ほとんどの人が治ると期待できます。進行してステージ4となると23.3%に下がります。
早期発見に勝る「治療法」はありません。
戸塚共立第1病院消化器センターの2019年の実績では、残念ながら根治不能な進行がんとなってからの発見が20%と高確率でした。(直腸がんの場合、人工肛門となる場合もあります)「大腸がんで命を失う人が多いのはとても残念」と専門医は口をそろえて言います。
早期で発見さえできれば、手術室でお腹を切開することなく、通常の大腸内視鏡検査と同様に、内視鏡室にて肛門からスコープを挿入するだけで、眠っている間に処置が終了します。入院期間は短く、お体の負担や治療費も軽減でき、職場復帰もスムーズです。

YFHS(横浜未来ヘルスケアシステム)の消化器チームは、地域の大腸がんゼロを目指しています!

横浜市の3年間のコロナによる死亡者数は1865人、大腸がん死亡数は5561人です。

同列に比較はできませんが、この3年間、市民の皆さまと共に闘ったコロナによる死亡に対して、大腸がんによる死亡数の多さがわかると思います。
横浜未来ヘルスケアシステムの消化器センター、健診センター、内視鏡室は、地域の皆さまの健康と暮らしを守るという熱い想いを掲げ、大腸がん死ゼロを目指し、日々進歩する内視鏡治療の技術を習得し、研鑽を積んでおります。また市民の皆さまには、地域医療公開講座を、地域の開業医の先生方とは消化器病カンファレンスを実施して、消化器の病気や受診に対するハードルを下げるべく、啓蒙や研究活動など積極的な取り組みを行っています。

超高齢化社会において、検診から救急、手術、緩和医療に至るまで、幅広い局面で多様な選択肢、可能性を市民の皆さまにご提供できる内視鏡医療の役割は非常に大きいと言えます。当施設ではご高齢な患者さまとご家族、また小さなお子さんのいらっしゃる働く世代の方々も、ご自宅近くで、制度が高く且つアットホームな顔の見える環境の中、検査から治療、フォローまでを一貫し、安心して受けていただけると自負しております。
戸塚共立第1病院では、ウトウトと眠った状態となる鎮静剤の使用、女性医師による大腸検査、専門資格を有する医師と看護師による治療内視鏡(早期がん切除)の対応が可能です。

それでもすぐに受診に踏み出せない方もいらっしゃるかと思います。
そうした方のために横浜未来ヘルスケアシステムでは地域医療公開講座を定期的に行っています。戸塚区役所やONE FOR ALL横浜など地域の施設に出向き、分かりやすく説明を行い、可能な限りご質問やご相談もお受けします。
また温かな雰囲気も自慢の一つですので、検査に対する小さな質問や不安は各施設までお気軽にお問合せください。コロナも落ち着き始めた今年こそ、皆さまでがん検診、内視鏡検査を受けましょう。

ここで確認!危険なサイン(大腸がんの初期症状)とは?

大腸がんは早期の段階では症状がほとんどありません。下記のような症状は大腸がんの初期症状と言われていますが、症状が現れた場合は進行していることもあります。一度検査を受けましょう。

● 便に血や粘液が混じったり、下血したりする(痔と自己判断しないこと)
● 下痢と便秘を繰り返す(便通異常)
● 便が細くなった、残便感、腹部膨満感がある
● 貧血症状がある
● 体重が減った