心筋梗塞について
~その症状・治療について~
戸塚共立第2病院 循環器内科の吉野 利尋(よしの としひろ)医師にお話しを伺いました!
心筋梗塞とは?
心筋梗塞とは、心臓に血液を供給している冠動脈が閉塞することにより心臓の筋肉が壊死する病気を指します(細胞が死ぬことを『壊死』といいます)。
心筋梗塞の大部分は、動脈硬化の進んだ血管壁の内側に脂質からなるコブのようなものが生じることで発症します。まずLDL(悪玉)コレステロールが血液中に増えすぎると、血管の内側にある内皮細胞のすき間からLDLコレステロールが入り込みます。続いて、それを排除しようとする免疫細胞や、その他の細胞も入り込むため血管壁がコブのように膨れ上がりプラークを形成します。このプラークが大きくなって破裂するとそこに血栓(血液の塊)ができて血管が塞がってしまいます。
● 動脈は外膜、中膜、内膜からなり、内膜に内皮細胞が存在し、血管の健康状態を
維持するのに重要な役割を果たしています。
● 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙者などは動脈硬化のハイリ
スク要因になります。
心筋梗塞の合併症
合併症としては、致死的な不整脈、心不全、ショック、心破裂、心臓弁膜症などがあります。またこれらの合併症により心臓手術が必要になる場合もあります。
ここで「心筋梗塞」「狭心症」との違いについて確認を!
「心筋梗塞」に類似した病気に「狭心症」があります。心筋梗塞は、冠動脈が詰まった結果、心筋が壊死しますが、狭心症は冠動脈が狭くなった状態で血流があるため壊死には至りません。
心筋梗塞の症状
突然の胸の痛みや締め付け感、圧迫感、焼け付くような感じが20~30分以上持続します。なかには胸以外の部位に痛みを感じて、発見が遅れることもあります。首や背中の痛み、腹痛、無症状のこともあります。
心筋梗塞の急性の治療は閉塞した冠動脈を再び開通させて心筋の壊死を最小限にとどめるところにあります。再開通は早ければ早いほどよく、これにより心臓の壊死を減らすことができます。
心筋梗塞の治療について
冠動脈インターベンション、血栓溶解療法、冠動脈バイパス術があります。
循環器内科医が普段行っている冠動脈インターベンションについて詳しく説明します。
冠動脈インターベンションとは、狭くなった冠動脈を血管の内側から拡げるために行う低侵襲的な治療法で、手首や足の付け根の血管からカテーテルを挿入して、狭窄、閉塞した冠動脈を治療します。カテーテルの先端にあるバルーン(風船)を拡張して、血流を再開させた後、ステント(金属の筒)を留置します。
ステント留置術とは、冠動脈内にステントを留置して血管を広げたままにするための治療法です。
冠動脈インターベンションの治療後は、ステント血栓症(ステント内が血栓閉塞する術後合併症)と心筋梗塞
の再発を防ぐために数か月間に渡って2種類の抗血小板薬を内服する必要があります。その後は1種類となります
が永続的に内服することが勧められています。
心筋梗塞の予防について
心筋梗塞の予防のために、生活習慣病の是正、禁煙、適度の運動、食生活の改善は必要なことなのですが、基礎疾患のある方は定期的な受診、基礎疾患のない方でも定期的な健診をお勧めします。また前述した心筋梗塞に似た症状がある場合は、狭心症の可能性があるため循環器専門医のいる病院での精査が必要となります。戸塚共立第2病院では2022年度より、循環器内科と心臓血管外科がタッグを組んで、心臓や血管に病気のある患者さまへ最適な医療を提供できるように「循環器センター(ハートセンター)」を設立いたしました。当センターでは、心臓や血管の病気に対して検査や治療をおこない、院内の各科と連携をとりながら患者さまに健康的な生活を送っていただけるようお手伝いをいたします。気になる症状がある場合はどうぞお気軽にご受診ください。
循環器センター (ハートセンター)
左より 眞壁英仁医師、吉野利尋医師、佐藤正岳医師
濱石誠医師、饗場正宏院長、横山NP
カテーテル治療中の吉野利尋医師