ロコモ対策としての人工関節手術

戸塚共立いずみ野病院
人工関節センター
柁原 俊久(かじわら としひさ)医師
専門分野
股関節外科/膝関節外科/外傷外科
資格
日本整形外科学会専門医/日本人工関節学会認定医
ロコモーティブ症候群とは?
日本人の平均寿命は延びていますが、元気に自立して過ごせる「健康寿命」との間には約10年の差があります。その主な要因の一つが整形外科疾患で、要支援・要介護の約4分の1を占めます。中でも「ロコモーティブ症候群(ロコモ)」は、運動器の障害で立つ・歩くなどが難しくなる状態を指し、進行すると転倒や骨折、寝たきりにつながります。ロコモ予防は健康寿命を延ばし、豊かな日常を守る大切な取り組みです。(図1)(図2)


関節機能回復の切り札-THAとTKA
ロコモの大きな原因となるのが、変形性股関節症と変形性膝関節症です。これらの進行により歩行や階段昇降が困難になり、生活の質(QOL)が著しく低下します。痛みを根本から取り除き、機能を回復させる手段として、人工股関節置換術(THA)や人工膝関節置換術(TKA)が行われています。術後は多くの方がスムーズに歩けるようになります。我が国では長寿・高齢化、手術の低侵襲化に伴い、手術件数は年々増えてきています。

2025年6月より本格稼働した当センターでは、股関節・膝関節の両方にロボット支援手術(StrykerMakoRobotic – arm Assisted System)を導入、患者さま一人ひとりに合った治療を提供しています。(図4)

ロボティック支援人工関節手術の進化と利点

当センターでは、ロボット支援手術(Makoシステム)を導入しています。術前CTをもとに立体的な手術計画を立て(図5)(図6)、術中はロボットアームが骨切りを正確にサポートします。
 これにより、インプラントの設置精度が格段に向上し、関節のアライメントも最適化されます。術後の痛みや回復期間も短縮され、患者さまへの負担が軽減されるのが大きな特長です。
当センターの取り組み
 当院では2025年6月、股関節・膝関節の両方に対応したロボット支援人工関節手術(Makoシステム)を導入し、「人工関節センター」を新たに設立しました。
 このセンターでは、CT画像をもとにした精密な術前計画と、ロボットアームによる高精度な骨切りを活用することで、インプラントの設置精度を高め、関節のバランスを最適に整えることができます。その結果、術後の痛みの軽減や回復の早期化といった効果が期待されています。
 また、手術だけでなく、術前の準備から術後のリハビリ、さらには日常生活への復帰に至るまで、医師・看護師・リハビリスタッフ・地域連携室など多職種が連携し、患者さま一人ひとりに寄り添ったサポート体制を整えています。現在は安全で円滑な運用のため、各職種が協力して体制づくりを進めている段階です。
結び
 当センターがめざすのは、関節の痛みに悩む方々に「再び自分らしく歩ける日常」を取り戻していただくことです。
 ロボティック技術と専門チームの協力によって、これまで以上に安心して受けられる人工関節手術の提供を目指しています。これからも地域の皆さまの健康寿命を支える拠点として、一歩ずつ取り組みを進めてまいります。
