下肢静脈瘤ってどんな病気?

下肢静脈瘤ってどんな病気?

戸塚共立第2病院
心臓血管外科/下肢静脈瘤センター

饗場 正宏(あいばまさひろ)名誉院長

専門分野
心臓血管外科/胸部・腹部大動脈ステントグラフト治療

資格
心臓血管外科専門医・心臓血管外科専門医修練指導医・脈管専門医
日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医
日本外科学会専門医・指導医/日本胸部外科学会認定医・指導医
胸部ステントグラフト実施医/腹部ステントグラフト指導医/
下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術指導医
大腿動脈ステントグラフト実施医

下肢静脈瘤にはどんな種類がありますか?

下肢静脈瘤は外見と病態から【伏在静脈瘤】【側枝型静脈瘤】【網目状静脈瘤】【クモの巣状静脈瘤】と4つに分かれます。
伏在静脈瘤や側枝型静脈瘤は、足の血管が浮き上がり、蛇行して、ぼこぼことした状態が特徴です。一方、網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤は、平坦で地図のよう、あるいはペン
で描いたような細い血管が広がるのが特徴です。(図1)

どうしてできるのでしょうか?

人間は直立して生活するため、下肢の血液は重力に逆らい、足先から心臓へと戻る必要があります。このため深部静脈と表在静脈(大伏在静脈、小伏在静脈)には弁があり、歩いたり、足を曲げ伸ばしたりすると筋肉が静脈を圧迫して血液を上方に押し上げますが、圧迫が緩むと弁が閉じて血液の逆流を防ぎます。また、決まった場所に交通枝(穿通枝)という表在と深部を連絡する枝があり、表面から深部に向かって血流が流れます。(図2)

伏在静脈瘤は表在静脈の弁が壊れて逆流する、側枝型静脈瘤は交通枝(穿通枝)が深部から表面に向かって逆流するのが原因です。(図3)
また弁が壊れたり、交通枝が逆流する原因は不明ですが、体質が影響していると考えられ、さらに長時間の立ち仕事、妊娠・出産などが静脈瘤を進行させます。一方、網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤は静脈の逆流はなく、主にホルモンなどが原因で静脈が拡張することで発生します。

症状にはどんなものがありますか?

血液が心臓に向かって十分に戻らず、足に血液が貯まること(うっ滞)や、循環が悪くなることで下肢静脈瘤が発生します。初期は無症状ですが、進行してくるとむくみ、だるさ、つっぱり感、違和感が出現し、さらにうっ滞が進むとかゆみや湿疹、色素沈着が生じます。また、静脈瘤の中で血液が固まると、血栓性静脈炎が発生し、皮膚が赤く腫れ、強い痛みを伴います。さらに進行すると皮膚が壊死して、潰瘍や出血を生じることもあります。それに対して網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤は静脈の逆流はないため、自覚症状が現れず、見た目が問題となります。

診断はどのように行いますか?

診断はほぼ外見からつきますが、逆流する静脈と弁不全の存在範囲の
確定は超音波検査で行います。超音波検査は身体に負担をかけず、約
30分で完了します。

どういう治療がありますか?

治療の必要性は下肢静脈瘤の種類や症状によって異なります。症状がないからといって放っておくと徐々に悪化します。治療法には薬(内服薬や注射薬)はなく、弾性ストッキング着用による保存的治療と手術による根治的治療のみです。
また弾性ストッキングは市販のものや全身麻酔の手術前後に使用されるストッキングより、強い圧迫を保つものを使用します。弾性ストッキングを着用することで、表在静脈の拡張や血液の逆流を抑制し、血液が深部静脈に流れやすくなり、下肢に血液が貯まることなく心臓へ戻りやすくなります。しかし、弾性ストッキング着用は下肢静脈瘤の進行を遅らせるだけで、完全に治すには手術治療が必要となります。手術の目的は、弁が壊れて逆流している下肢静脈の逆流を止めることにあり、その方法にはストリッピング手術(静脈抜去術)、レーザー治療と呼ばれる静脈焼灼術(図4)、グルー治療と呼ばれる静脈塞栓術(図5)があります。

レーザー治療器

グルー治療器

また、側枝型静脈瘤には不全交通枝結紮術が効果的な治療法になります。静脈瘤自体は逆流を止めることで軽減しますが、多くは見た目の改善も含めて小切開で切除する静脈瘤切除術を行います。手術は局所麻酔で日帰り、または全身麻酔で1泊2日の入院で行い、その後、3~4週間の通院で完治となります。
下肢静脈瘤の症状で何か気になる場合は、戸塚共立第2病院の下肢静脈瘤センターをご受診ください。また下肢静脈瘤について公開講座を定期的に実施しています。治療や手術について詳しくお話しますので、こちらにもお気軽にご参加ください。

戸塚共立第2病院

住所:横浜市戸塚区吉田町579-1
TEL:0570-00-3205