【特集】甲状腺って?

甲状腺って?

戸塚共立第1病院

戸塚共立第1 病院 甲状腺外来
昭和医科大学横浜市北部病院 甲状腺センター・外来
福成 信博(ふくなり のぶひろ)医師

専門分野
甲状腺外科

資格
日本外科学会専門医・指導医/日本消化器外科学会専門医
日本甲状腺学会専門医・専門医試験委員/日本内分学会代議員・編集査読委員
日本内分泌外科学会理事・評議員・専門医・名誉会員
日本乳腺甲状腺超音波診断学会(JABTS)名誉特別会員
日本甲状腺Intervention研究会理事長
臨床神奈川甲状腺検討会代表世話人

甲状腺とは?

 甲状腺は、首の前側、喉仏のすぐ下に位置する12-15g程
度の小さな器官で、蝶が羽を広げたような形をしています。体内の内分泌器官のひとつであり、主な役割は甲状腺ホルモンを血液の中に分泌することです。
 甲状腺ホルモンには「サイロキシン(T4)」と「トリヨードサイロニン(T3)」があり、また頭の中にある下垂体と呼ばれる部位から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺のホルモン分泌を常に調整しており、これらは全身の新陳代謝を調整する重要な働きを持っています。

新陳代謝とは、食べ物から得たエネルギーを体が利用し、細胞を維持・再生するための一連の化学反応のことを指します。甲状腺ホルモンが適切に分泌されることで、体温の維持、心拍数の調整、筋肉や神経の働きなどが正常に保たれます。甲状腺ホルモンは体の「エンジンオイル」のようなもので、体がスムーズに動くために必要不可欠なものです。特に成長期の子どもや胎児にとっては、正常な発達に欠かせないホルモンです。

 甲状腺の働きが強すぎたり(「甲状腺機能亢進症」バセドウ病など)、弱すぎたり(「甲状腺機能低下症」橋本病など)すると、さまざまな症状が現れます。
 例えば、甲状腺ホルモンが多すぎると、動悸、汗をかきやすい、体重減少、不安感などが出ることがあります。
 一方、ホルモンが少ないと、疲れやすい、寒がり、むくみ、体重増加、気分が落ち込むなどの症状が見られることがあります。
 甲状腺の疾患は、遺伝的要因やストレス、自己免疫の異常、ヨウ素摂取量などさまざまな要因によって引き起こされることがあります。特に日本では、ヨウ素を豊富に含む海藻類の摂取が多いため、世界的に見ると甲状腺疾患の傾向が異なる場合があります。

受診の目安は?

 甲状腺の病気は、男女を問わず、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に起こり得ますが、特に女性に多いと言われています。 
 多くの場合、血液検査や超音波検査で甲状腺の状態を調べることができます。治療法は、病気の種類や症状によって異なり、薬による治療や、場合によっては手術が必要になることもあります。
 甲状腺の病気は、適切な診断と治療を受けることで、ほとんどの場合、日常生活を問題なく送ることができます。「体調がなんとなく悪い」「疲れやすい」「首に違和感がある」といった症状がある時は、無理をせず、遠慮なく医療機関にご相談ください。甲状腺の検査は簡単に受けられますので、気になることがあれば早めの受診をおすすめします。甲状腺は、私たちの健康を陰で支えている大切な臓器です。正しい知識を持ち、必要なときには適切な対処をすることで、安心して毎日を過ごすことができます。